僕の傍で笑っていてくれるだけでしあわせ



僕の傍で笑っていてくれるだけでしあわせ

幸せってなんだ。
好きな奴が傍に居て、笑って、互いを必要としていること?だったら俺達は概ね幸せなんだろうか。
好きじゃあねぇが恋人のように傍に居て、互いを貶る時だけ凄くいい笑顔で笑って、今じゃ互いのエゴの為だけにその存在を必要としている。
報われたい訳じゃあねぇけど、報われない。
(そもそもアイツとはウマがあわない、それを互いに望んで等いない)
ボランティア精神溢れる俺、なんて思いつつ残りの日数を数えてみる。
あと三日。あと三日で報われない俺のボランティア活動は終わりを告げ、嘘で塗り固められた恋人ゴッコもオシマイ。
なぁライル、それでいいのかよ。お前の勝ち得たものは何だ?中途半端に残ったアイツへの関心だけ。そんなもの取っておいても、もやもやして終わりだぜ。

「なぁ、お前にとって幸せって何よ」

問い掛けた先で言葉に詰まるアイツの姿に、妙な優越感が押し迫る(よくよく考えりゃ、突然こんなことを聞かれて即答出来るような奴の方が珍しい、俺は無理。この時の俺の頭はどうかしていた)
何度かまばたきをして、少しだけ考えるような仕種をして、この偽善者ぶった表情から、その唇からどんな戯れ事が聞けるのかと胸が高鳴る。我ながら、この考えは間違っていると思うのだが、仕方が無い。

「変な事を聞くんですね。僕達は、人々の幸福を脅かす組織だ。そんな僕等が幸せについて考えられる立場じゃない」
「けどお前は、俺が聞いた時に僅かでも考えた、幸福についてだ」
「聞かれたら一瞬でも思考する、人間ってそういう生き物でしょう?」
「違いねぇ。…で、お前にとっての幸せは?」
「…僕の話、聞いていました?」

聞いていて、肯定した。それで十分だろう?何が不満だ。
寸分違わぬ表情のまま見つめ続ければ、大きな、そりゃあもうわざとらしいにも程があるって程大きな溜息をつかれる。その気持ちはわからないでもないから敢えて何も突っ込まない。
だって仕方が無いだろう?気になるんだ。
コイツにとっての幸せってやつが。
別に俺自身が与えてやろうなんざ、そんな慈悲深い心は残念ながら持ち合わせていやしねぇけれども、好奇心って重要だ。

「勿論、だから聞いてる」
「本当に自分勝手な人だ。…どうしてもと言うなら‥そうだな、一つだけ。ロックオンが僕の傍で笑っていてくれるだけでしあわせですよ」
「…あ、っそ」

なんだろうか、嗚呼聞かなければ良かったと今更ながらそう思う。別に何か別のものを期待していた訳ではないのだが、一気に気が殺がれた。わかっていた筈なのだ。こいつがそう優しい奴ではないのだと。
ロックオン、等と私情で呼ぶことなど一度も無かったこいつが呼ぶ『ロックオン』は『ロックオン』であって俺ではない。
無言で、言われた気がした。
貴方が笑えば貴方のお兄さんが笑ってくれているようだから幸せです、って。
ああそうかい、なんて軽くかわせる程兄さんに対するコンプレックスは軽かぁない。おいおい、兄さんと逢わなくなって何年経っているんだ、なんてナンセンスなツッコミは求めていないぜ。この気持ちは、俺にしかわからないこと。こいつの幸せはくだらない幸せだと、そう思って自分を慰める己の姿が滑稽だ。

「じゃあさ、笑わなかったら幸せじゃねぇんだ?」
「しあわせじゃあないけれど、不幸だとは思わないかな」
「でもそれって俺が居なきゃ幸せにはなれないってことだろ?」
「言い換えれば、そうですね。でも、僕はもう幸せなんて求めないことにしているので」

俺は不要、ってか(必要にされても困るが、こうもあっさりバッサリ切られるのは癪だ)
なんだか無性に腹が立って、意味もなく頭を壁へと押さえ付けて微笑む。こんな時にも眉一つ動かさないこいつが憎い。髪を強く引っ張るように握り締めて、こいつを睨み付ける俺の瞳には感情が乗ってしまっていたかもしれない。そんなダセェ事、したくねぇのに。

「誰が与えてやるなんて言ったんだよ、付け上がるな」
「だから、求めていないって言ったでしょう」

掴んだ頭を床に叩きつけるようにして、離す。
ガツンと鈍い音がして、妙に息の上がった自分の姿と何も言わず床に蹲るこいつの姿。
間違いない。
俺達の溝は多分一生、埋まらない。







FIN.
091122
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